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シン・タカハマ物語 ~Story of Takahama~ 原作小説紹介

 現在、市民映画「シン・タカハマ物語 ~Story of Takahama~」の制作を通じ、こども・若者の成長を応援する取組みを、Kids Now(きずな)実行委員会が実施しています。

 「シン・タカハマ物語 ~Story of Takahama~」の原作となる小説の募集が、2023年に行われ、大賞1作品、準大賞2作品、佳作10作品が選ばれました。

 大賞作品は、「シン・タカハマ物語 ~Story of Takahama~」が完成したときのお楽しみですが、大賞作品以外の準大賞や佳作の作品もとても面白い小説ばかりでした。

 せっかくなので、準大賞や佳作を受賞された作品を毎月、順に紹介していきます。

 
タイトル 広報掲載号
真夏の世の夢。 令和7年6月号
余命士〜拝啓、お父さん、お母さんへ。僕は自分の名前が大嫌い〜 令和7年7月号
大山緑地の大タヌキ 令和7年8月号
時を超える瓦工房 令和7年9月号
八幡社の不思議 令和7年10月号
私とタカハマととりめし 令和7年11月号
ユメと夢~あなたには守りたい人はいますか? 令和7年12月号
僕と夢来が奏でる未来 令和8年1月号
翔んでタカハマ 令和8年2月号
みんな食堂、本日開店! 令和8年3月号
光と夢と 令和8年4月号

 

光と夢と

作者 : 柊 あか

 

子どもたちの手で作られたランプシェードに火が灯る。その様子を見ながら、幼いころのことを思い出す。

「このランプシェードの光をつけるときに、心の中で願い事をするとその願いは叶うんだってよ」

そう言っていた、彼の願いは本当に叶ったのだろうか。

 

「それじゃ、みんな。できたやつは、秋のお祭りに並べるからね」

「はーいっ!」

目の前にある粘土の塊を先生の指示に従いながら形を作っていく。

「うわ、輝。やば、形終わってるって」

「そんなことないし」

「先生、輝くんの作品がやばいです」

「言うなって、そういうの」

「大丈夫よ!芸術は爆発だというもの。いいのよ、好きなように作って」

「はーい、だってよ」

先生の明るい笑顔に安心しながらも、一人だけひび割れたものを飾るわけにもいかないため、試行錯誤を重ねていく。

「俺、これ作るの楽しみにしてたんだよな」

「そうなの?」

「ああ。だって、家に兄ちゃんが作ったやつがあるから。だから、今年は俺の番だと思って」

「意外、図工とか苦手なのに」

「それとこれは別なんだよ」

口と手を同時に動かしながら、少しずつ形を作っていく。そして、なんとか完成したものに名前をつける。

「蒼大のテーマは......それは桜?」

「知ってるか?桜って警察を表す模様なんだぜ」

「そうなの?でも、なんで桜?」

「俺、父さんみたいに警察官になりたいから、だから桜」

「へぇー、かっこいいじゃん」

「そういう輝は、電車と星?」

「好きなように作っていいって先生が言ってたし、好きなものを入れてみた」 

「お前、こういうのが好きだっけ?」 

「これが出てくる物語が好き。この前、授業でやった作家の作品の一つ」

「よく覚えてねぇけど、輝が本読むの好きだったのは思い出したわ。いつも読んでるし、なんか書いてるもんな」 

「.......まあ、うん」

完成したものを壊さないように、保管場所へと運ぶ。

「きれいに焼けるといいな、まじでひび割れたら兄ちゃんに笑われそう」

「大丈夫だよ、きっと」

きっと、きれいにできる。そう信じて、その日を待った。

 

月日は経ち、僕たちが作った作品が飾られる鬼みちまつりの日がやってきた。

「俺が作った作品は......」

沢山の人たちの手によって作られたランプシェードが次々と飾られていく中で、自分達の作品を探す。

「えーっと、あ、あった!俺の!」

蒼大のランプシェードの横には僕の作品もあった。

「あー、よかった。割れてないじゃん!俺の」

「僕のもだ」

この日を向かえるまで、一人だけ失敗していたらどうしようと思っていたが、いらない心配だった。

「写真、写真と......」

飾られている作品を何度も撮影する蒼大の様子を見ていると、スタッフの人に声をかけられた。

「これは、君たちが作った作品かな?」

「はい!こっちが俺ので、となりのがこいつのです」

「そうか、上手にできたね。この後、中の灯りを点灯させるんだけれど、自分達の手でやってみるかい?」

「え、いいんですか!?やろうぜ、輝」

「でも......」 

「自分の作った作品だし、記念にね。どうかな?」

優しい言葉と問いかけに僕は小さく頷いた。

「あと数分で点灯するからよろしくね」 

僕たちに声をかけるとすぐにその人は他の場所へといってしまった。

「なあ、知ってるか?」

「なにを?」

「このランプシェードの光をつけるときに、心の中で願い事をするとその願いは叶うんだってよ」

キラキラとした目で僕を見つめる彼の瞳は嘘をついているようには見えなかった。

「さすがに嘘でしょ」

「嘘じゃねぇーし、兄ちゃんの時も、光をつけさせてもらったらしいけど、その時にテストで100点取れますようにって願ったら本当に取れたって!」

遠くの方で、点灯のカウントダウンが聞こえてくる。

「偶然じゃないの、それ」

「まじだって!だから、俺は願い事するぜ。だから、輝もしろよ!」

「は、いや、僕は」

彼の言葉を遮ろうとした瞬間、カウントが0になる。

急いで、聞こえてきた音と共に、咄嗟に心の中で一つの願い事をした。

蒼大の話を全部信じたわけではないが、つい願ってしまった。

「.......すっげぇ、きれい」

蒼大の声に顔を上げるとそこにはオレンジの光を放つ、輝きが広がっていた。

「......うん、きれいだね」

「なに願った?」

「......教えない」

「なんだよ、俺の話信じてんじゃん」

「......そういう蒼大こそ、何を願ったの?」

「それは、俺の願いが叶ったときに教えてやるよ!よし、写真も取ったし、願い事もしたし、満足!他のところ行こうぜ!」

自分のやりたいことが無事に終わり満足したのか、駆け足でこの場を離れていった蒼大を僕は急いで追いかけた。

 

光が差し込む。人々がきれいと感嘆の声をあげる。

目の前に広がる光の海が僕らを包み込む。

「それで、きみの夢も叶ったの?」

執筆の仕事の合間に、久しぶりにこの祭りが再開されると聞いて、帰省したところ、懐かしい顔と出会った。

「......言ったはずだろ?あの日の願い事は叶うんだよ」

そう言った彼の手には桜があった。

みんな食堂、本日開店!

作者:わら さなみ

 「えっ?お店辞めたの?」

 私は驚き、悲しみと残念な気持ちになった。この場所が大好きだったから。なくなるなんて考えてもなかった。

 お母さんに「どうして?」と聞くと、「わからないけど、おばちゃんたち儲からないからじゃない?だってお値打ちすぎてたもん。」と返ってきた。確かにおかわり無料でこんなに安いなんて儲からないよな…。と思った。だけど、急になくなってしまうなんて…。

 ここは私の大好きなお店「ぽっぽっぽ」。名物のとりめしを今まで何杯食べたことか。働くおばちゃんたちの笑顔に元気をもらい、おまけで手作りお菓子をくれたり、いっぱい声をかけてくれ、私のお腹と心をいっぱいにしてくれた場所。もうその場所がなくなってしまったなんて、現実を受け入れることができなかった。

 「テレビでも、紹介されていたのにねぇ…。」「とりめし、おいしかったのにねぇ…。」「おばちゃんたち、元気にしてるかなぁ…。」お母さんと妹と私は、とりめしをおかわりするために朝ごはんを抜いていたので、お腹をグゥグゥと鳴らしながら、お店の思い出話をして家へ帰った。

 私が「ぽっぽっぽっ」に行くようになったのは、7年前。小学1年生の時だ。おいしくて安い店が近くにあると妹を出産前のお母さんと一緒に行った。「いらっしゃいませ。」店員さんはおばちゃんだらけ。「妊婦さんにかわいい子も一緒で!どうぞ、どうぞ!」とメニューはとりめしランチだけだから、注文も聞かれず、すぐにほかほかのとりめしとお吸い物、おかずもでてきた。どれもおいしいけど、とにかくとりめしがおいしくっておいしくって。私もお母さんもおかわりをして食べた。「ごちそうさま!」「大人400円にこども200円で600円ね!」「おいしかったです。ごちそうさまでしたー!」お母さんと私はその日からお母さんが育休中は週1で行き、その後は月1で通った。でも、ここ一年は私が中学生になり、習い事や学校の部活で全然行くことができなくなってしまっていた。久々に来れたと思ったら閉店していたという、思い出の場所を失くした喪失感しかなかった。閉店を知っていたら最後に沢山とりめしを食べたのにという後悔も残った。

 しばらくしたある日、私は買い物を頼まれ、スーパーへ行くと、スーパーの入り口でおしゃべりしているおばちゃんたちが居た。(もう、入口の真ん中で…)横目に入ろうとして顔をちらっと見ると…「ん?なんか知ってる…。誰だ?」しばらく歩いて気が付いた。ぽっぽっぽのおばちゃんだ!エプロンと帽子がなくてすぐにピンとこなかった。私はあわてて戻り、「おばちゃん、わたし、さなみだよ!」「わかる?とりめしいっぱい食べに行ってたよ。」おばちゃんはしばらく考え、「さなみちゃんか!わかる、大きくなったね、久しぶりじゃない!」とスーパー前で大好きな場所のおばちゃんと再会することができた。

 「なんで辞めちゃったの?ちょっと前に行ったんだよ。閉まっていてびっくりしたよ。とりめし食べたかったよー。」と私が言うと、おばちゃんは笑って、「知らんかった?もうおばちゃん達、歳だからさ。後継者もいないし閉めたよ。」「とりめしは、お母ちゃんに作ってもらいなよ。あれだけ食べたから、きっと作れるさ。」と言った。「いやいやお母さん、作れないよ。」と答えたら「なら教えてあげるわ!」と話が進み、おばちゃんと私はライン交換をして、おばちゃんと友達になり、おばちゃんの自宅でとりめしの作り方を教わることができた。その時に必死にメモしてまとめた「ぽっぽっぽのとりめしレシピ」は、その後我が家の宝物となり、おばちゃん家で教わった日以来、我が家のヘビロテメニューとなった。

 現在、私は保育士を目指す大学2年生になった。大学に入り、私は子どもと関わるボランティアをするようになった。そこで、こどもの孤食や貧困など目の当たりにした。そんな現状を知って、思い出したのが、小さいころ通った「ぽっぽっぽ」ことである。たくさん食べて、おいしくて温かくて大好きだった場所。そんな場所を、今の子どもたちにも作ってあげたい!と強く思った。そこからの私の動きは早かった。ぽっぽっぽがあった場所は、地域のフリースペースとして開放されている。ここを使い、子どもも大人も外国の方も障がいのある方もみんなが来れる「こども食堂」いや、「みんな食堂」を開きたい。そこで、おばちゃんから教えてもらったとりめしを食べてもらいたい。そんな思いを、市の職員や地域の人、ぽっぽっぽっのおばちゃんたち…多くの人達の協力のもと、実現することができた。私は地域の優しさ温かさ、つながりの大切さを痛感し、「みんな食堂」でみんながつながるとよいなと思った。

 そして…いよいよ本日開店!だれでもおいでよ、みんなの居場所「みんな食堂!」

 私の大好きだった場所で、大好きなとりめしをみんなでまた食べれる日が来るなんて…とっても幸せだ!

翔んでタカハマ

作者:ソフラン

 

20XX年。

高浜市民Kは自宅近くの畑で農作業に勤しんでいた。自然だけは豊かな高浜市・・・鳥のさえずり・・・

ポケットから取り出したスマートフォンに目をやるとお知らせメールが入っていた。ルート41X沿いのスーパーに久しぶりに商品が入荷したため、肉や卵の販売をするという。ボロの自転車にまたがり、凸凹道をゆっくりと走る。

スーパーに着くと、改造した原付バイクにまたがったならず者たちが肉や卵を強奪しているところだった。

「やめてください」店長が涙ながらに訴える。「次はいつ入荷できるかわからない貴重な食料です。みんなで 少しずつ分け合わないといけないんです」

「他のやつらのことなんて知ったことか。俺たちはいつも腹が減っているんだ」

ならず者たちはどんどん商品を原付バイクに積み込んでいく。

(大変だ。ポリスメン を呼ばないと)

エコバッグからスマートフォンを取り出し・・・いやしかし・・・ポリスメンは来るだろうか・・・ 高浜市には警察署がないのだ。

「どうかポリスメンを呼んでください。僕は他の助けを呼んでみます」

甲高い声に振り向くと誰もいない。

「ココですココです」

ニワトリだった。

「ココ。ココ。コケコッコ。コケコッコ~。」

大声で鳴くと高浜市中の他のニワトリが共鳴する。しばらくすると・・・

高らかな蹄の音が遠くから近づいてきて、真っ白な馬が現れた。

(助けって馬だけ?)

心の中で突っ込むKだったが、よく見ると駆馬神事風に手綱にしっかりと掴まったカワラッキーがいた。

「僕が来たからには悪事は許さないぞ」「 何だコラ。チビ。泣かすぞ」「エーン。巨大ロボ発進」

(巨大ロボまでの展開が早い)

大山緑地公園から巨大なたぬきロボが現れた。

「弱点はわかっているぜ。こいつは39年式の陶器製だ」

ならず者たちの 釘バットの攻撃。

たぬきロボは100ポイントのダメージを受けた。

たぬきロボはバラバラに砕け散った。

(もうダメなのか)

 諦めかけたその時 ・・・ 砕け散った破片の一つ一つが小さなたぬきロボに変化し、「タヌ・タヌ・タヌ」掛け声と共にならず者たちに襲いかかる。

「痛てて。覚えてろ~ 」

ならず者たちは慌ててバイクに跨がり立ち去った。

「ありがとう。ありがとう」

感謝する市民たち。

遅れて警察官が到着した。

僕と夢来が奏でる未来

作者 ポポ

 

 「おめでとうございます。元気な男の子ですよ」

 助産師さんが言った。

 2040年5月7日、体重3120g、身長51cmの男の子が佐々木夫妻のもとに生まれた。

 待ちに待った第一子、二人は悠悟と名付けた。

 悠悟の誕生は家族皆を幸せにした。

 祖父母は悠悟の誕生を記念して悠悟と同じ、重さ3120g、高さ51cmのAIロボットを贈った。

 そのロボットは夢来(ムク)と名前が付けられた。

 夢来は普段床の掃除をしたり、家族の指示に従って照明やエアコンをつけたり、悠悟をあやすために音楽を流したりと家事や育児を手伝っていた。

 そして家族の会話や行動、テレビから流れてくる様々な情報を次々に記憶して、三か月も経つと、色々なことができるようになっていた。

 中でも夢来のすごいところは、僕がギャーギャー泣く欲求を一つ一つ正確に感知してくれることだった。

 言葉が話せず、ただ泣くことでしか欲求を伝えられない僕はたびたびお父さん、お母さんを困らせることがあった。

 しかしそこは夢来!僕のオムツセンサーに反応してお母さんを呼んでくれたり、眠くて大声で泣いているとベッドの横のボタンをポチっと押してベッドを揺らし、僕を寝かしつけてくれる。

 お腹のほんの僅かな音と口元をチュパチュパさせる微妙な動きを感知するとお母さんに授乳の時だと知らせてくれる。

 手の指をピクピクと動かしているのを感知すると甘え泣きだと、抱っこをするように伝える。

 悠悟の大きな泣き声の理由が分からず子育てで疲れることもあった両親だったが、この夢来の学習機能によってかなり助けられていた。

 そして夢来にとても感謝していた。

 しかし、悠悟が小学4年生の春、お母さんは足が痛いと言って近くの病院へ入院した。

 入院した当初、悠悟はよくお母さんに会いに病院へ行っていた。

 そこではお母さんと沢山話し、楽しい時間を過ごしていた。

 病気さえ良くなればすぐに帰ってくると思っていた悠悟はゲームに熱中してお父さんの誘いを断ることさえあったほど、お母さんの病気を深刻なものだとは考えていなかった。

 しかし半年もするとお母さんの様子が少しずつ変化してきた。

 顔が瘦せ、声も出し辛そうにしていた。

 そのうちお母さんの顔色は悪くなり、もう話をする元気さえなくなっていた。

 このころになると悠悟は、お母さんに会っても、あまりの衰弱ぶりにショックを受け、面会に行くことが怖くなり病院へ行けなくなっていた。

 そして、真冬の夜中に、お父さんに無理やり起こされた悠悟は病院へ行った。

 そこでは今まで見たことのないくらい大泣きする祖父母の姿があった。

 悠悟はただ茫然と立ちつくすだけであった。

 お母さんを亡くした僕は毎日泣いてばかりいた。

 そんな日々が続いたある日、夢来が僕に近づいてきて話しかけてきたのだ。

 「悠悟そんなにめそめそしていないの」それはお母さんの声だった。

 「ん?お母さんなの」「そうよ、もういつまでも泣いているからお母さん心配になっちゃったわよ」僕は夢来を思いっきり抱きしめた。

 そう夢来は、AIが持ちえなかった感情を身につけていたのだ。

 それからと言うもの、学校から帰ると元気に「ただいま、夢来」「お帰り、悠悟」と会話するようになった。

 僕はお母さんが見ていてくれると思うと、嬉しくて宿題もすぐにやり、夢来に言った。

 「もう宿題終わったよ」「すごいわね悠悟、帰ってきてすぐに宿題を終わらせるなんて」僕はお母さんに褒めてもらえることが嬉しかったのだ。

 毎日寝る前には「おやすみ夢来」と言った。

 もう、僕はお母さんがいつも側にいて見守っていてくれると思うと、何もかもが嬉しくてたまらなかった。

 僕が赤ちゃんだったとき大泣きするのを助けてくれ、今はこうして、お母さんを亡くした悲しみで泣く僕の涙を止めてくれている。

 ずっと夢来は僕の成長を見守っていてくれたのだ

 そんな中、僕には不安なことがあった。いつかまたお母さんのように夢来がいなくなってしまわないだろうか。

 そんな思いを抱いていった僕は、ある日気づいた。

 この夢来は日々、学んで何かを獲得している。僕が何か新しいことを学んでいる間は、夢来も僕から何かを学ぶはずだ。

 そう思った悠悟は高校生になると、未来のAIについて深く学びたいと思うようになった。そして大学ではAIについての学びを深めた。

 僕が夢来に助けられ救われたように世界の人々の役に立つようにAIを進化させたいと思うようになった現在、夢来テクノロジー株式会社を設立し、日々研究に励むようになった。

 お母さん行ってきます。悠悟は心の中でそう言うと今日も元気に仕事へ出かけた。

『ユメと夢』~あなたには守りたい人はいますか?​~

作者:ユウ

ユメと夢

ある時僕はユメを見た。
それはずっと忘れられない程の眩し過ぎる夢を見た。

ガバっと起きた時、朝の5時だった。
寝汗に驚きながらも、その時見たユメは消防士さんのユメだった。
7階建てぐらいのマンションが大火災に遭い中には小さな子供が取り残されていて、外ではお母さんが泣きじゃくっている。
周りを紅く染めあげる炎、ますます視界を塞いでゆく煙・・・

その瞬間一人の消防士さんが危険を顧みずに子供を助けに向かうユメだった。
集まる人々は無事を祈る事しか出来ず、一分、一秒不安と焦りが押し寄せるばかりの状況だった。
人々が見守る中子供は大事に抱きかかえられながら無事に救助され、その消防士さんがヘルメットを取りかけるところで目が覚めた。
興奮が冷めなかった。

「あー勉強ってダリーよな」って隣の女の子に話しかける。

ユメと夢②

隣の女の子・・・ それは僕が密かにずっと想いを寄せている子で・・・
勇気が出ない僕はそれ以上前には進めていない。
「大変だけどしっかりやらなきゃね!」って笑いながら返事をくれる。
「そうだよな~、でも勉強って何でしなきゃいけないんだろう?」
「きっと誰かを守ったり、誰かの力になったりするためだよ」って明るい答えが返ってくる。
「勉強で誰かを守るってこと?」 ん~いまいちピンとこない・・・


学校から帰るとお父さんがいつものごとく勉強をする意味を何度も何度も説明してくる。
「勉強しないと人生の選択肢がどんどん減って、夢を追いかける事も難しくなるぞ!」って・・・
「将来の夢ね・・・はい、はい、お父さんのその話もう聞き飽きたよ・・・」
いつものようにやり過ごす僕。
「何度も言わなくても、分かってるよ・・・」
でも、あの夜に見たユメ、消防士さんのユメ。
僕はあの日から消防士を目指す事が人生の選択肢、いや夢になっていた。

それから僕の計画は始まった。
しっかりとこれからの道を調べてみると簡単にはいかない道のりだ。
勉強嫌いの僕でもこの先、夢に向かう目標が出来れば迷う事はなかった。

時は過ぎ、苦手だった勉強も何とか努力で乗り切り僕は消防士になり、密かに想いを寄せていた
隣のあの子にも僕の想いが伝わったのか、結婚することができ子供も一人産まれ、順風満帆の日々だった。

そんな幸せの時、悲劇は容赦なく襲いかかった。
自分のマンションが大火災に遭ったのだ、中には子供が・・・

「少しでも速く、早く着いてくれ」

響き渡るサイレンの音が胸を押しつぶしそうになる。
消防車の中で焦る心、急いで自分のマンションに向かう。
現場に着くなりマンションの前で妻が泣きじゃくっている。
考える間もなく僕は炎の中に走り出していた。

煙の中自分の部屋にたどり着くのも必死で、それでも何とか部屋の中に入り、苦しそうに咳き込む自分の子供を抱きかかえ何とか外に出ることができた。

子供を救助班にあずけ大きく息を吸い込もうとヘルメットを取った時、妙なデジャブを感じた。

まさか、まさかのあの夜に見たユメの消防士は自分だったと感覚的に今悟ったのだ。

あのユメの消防士の顔は振り向く前に目が覚めてしまったので、見ることができなかったのだが
ユメは夢だったのだ・・・

後日同窓会があり、懐かしい顔ぶれに出会った。
「あの火災・・・大変だったよな」
友人の一人が話しかけてきた。

「お前何で消防士になろうと思ったんだ?」と聞いてきた。

中学の時にこんなユメを見たからかなって笑いながら答えた。
その時友人はびっくりした顔で 「マジか!」
「俺も中学の時、多く子供たちに感謝されるユメを見て教師を目指したんだよ」って答えてきた。
その時周りのみんなも同じようなユメをみて先を夢をみる事になったと明るい笑いで会話が弾んだ。

自分の夢を叶える事や、誰かを守る事を目的とした時、勉強は手段の一つかもしれない。
でも、その努力は確実に強い力になる。

私とタカハマととりめし

作者:ぷるぷるぷりん

 

私は高浜市に住んでいる中学3年生の羽鳥目 惺月(はとりめ しずく)。

あだ名はとりめし。

そして好きな給食はとりめし。

私は給食でとりめしが出ると毎回おかわりする。

そして、「とりめし」というあだ名は小学生のときにつけてもらった。

あだ名をつけてくれたのは山城 一真。(やましろ かずま)

小学生のときからとりめしが好き。

あだ名がとりめしでとりめしが好き。

これは運命だと思う。

「とりめし!今日の給食はとりめしだよ!」

その声を聞いてテンションが上がる。

早く給食が食べたいな。

おなかがすいたけれどじゅぎょうがんばろう。

まちにまった給食。

今日の給食は友達が言った通りとりめし。

とてもウキウキしている。

「おーい!とりめし!今日の給食とりめしじゃん!」

みんなが私に言う。

「うん!楽しみ!」

私はそう返した。

「とりめし、テンション上がりすぎ。となりの教室まで聞こえる」

そう言ったのは一真。

「ごめんっ!」

一真はとなりのクラス。

「とりめし」ってあだ名をつけてくれたこともあり、仲が良い。

早くとりめしが食べたいな。

「いただきます」

そう言って給食を食べる。

もくもくと食べ、あっという間に完食。

とりめしに関わってくださった方たちに感謝した。

すべての給食を食べ終わった。

「ごちそうさまでした」

今は昼休み。

私は思いをつたえる。

「とりめしってあだ名をつけてくれてありがとう」

「そう聞こえたから」

ちょっぴり照れくさそう。

とりめしが私と一真をつないでくれた。

「ありがとう。好きだよ」

八幡社の不思議

作者:たむらリーこ

 

 十月の第一土曜日は、吉浜八幡社で秋の例祭がある日だ。小六になった私は、今年初めて祭りに参加する。朝から夕方まで、神輿太鼓の一員として演奏するのだ。夏休み明けの九月は、毎日のように横笛と太鼓の練習をしてきた。その成果をお披露目する今日、私の心はワクワクドキドキが止まらない。

「春ちゃん、早く車に乗って。」     

 パパが送ってくれる。まだ日が昇り始めた時刻だったが、昨夜から降っていた雨が止んで、空には大きな円い虹が架かっていた。半円の虹は見たことあるけど、円いのは人生で初めて見た。なんだか凄く良い予感がする。

「今日ちょっと寒くなるようだね。風邪ひかないように気をつけて頑張ってね。」

「うん。楽しんで頑張る!」 

 フロントガラスから虹を見上げ、心の中で、

『よっしゃ!』

と気合いを入れる。  

 神輿太鼓一行は、吉浜地区を練り歩いた後、お昼時には八幡社に帰ってきた。やはり寒さが応えて、かなり疲れた。笛を吹きながら歩き続けるのは、息が出来なくて、とても苦しい。しかも、笛と太鼓を順繰りに担当するのは私を含め、高学年が六人だけ。十人ほどの低学年は太鼓のみ。外だと、音がまばらにしか聞こえず、良いのか?これで・・と思いつつ酸欠になりそうな状態でなんとか頑張った。でも午後からは、神社内での演奏だから、もう少し上手に出来ると思う。       

『ああ、早く体を休ませたい。』

「はーい。皆さん、お疲れ様です。お昼は、鶏めしを用意してますから、どうぞ召し上がって下さいねー。」           

 高浜名物、鶏めし。美味っ♡何回も食べたことあるけど、人生で一番美味しい鶏めしだった。                   

 束の間、祭りの出店を見て周り、楽しんだ。あっという間に、午後の演奏時刻が迫る。

「はーい。神輿太鼓の皆さん。もうすぐ、午後の部始まります。今の内に御手洗い済ませといてねー。」             

 皆がバタバタとトイレへ向かう途中、やおらジャーッという滝が落ちるような水の音がした。私と目的地のトイレとの間に、たむろっていた、おまんとの馬さんがオシッコをしたのだ。馬のオシッコ。バケツをひっくり返したような量が飛び散っていた。初めて見た恐ろしい光景に固まって立ち尽くしてしまった。そんな私の背後から、低学年男子の集団がふざけ合いながら走って突進してきた。ドンッ!アハハハ・・ワーイ・・走り抜けて行った。

『いった!おいっ、どこに目つけてん・・ぬあっ⁉︎』                

 体当たりの勢いで、私の手から白い横笛が吹っ飛び落ちた。そこは、馬さんのオシッコの水溜まりだった。終わった。十二年間生きてきて、絶望という単語の意味を心から味わったのは、人生で初めてだった。私は、潔癖に近いキレイ好きな性格である。この横笛を、たとえ洗剤でゴシゴシ、除菌シートでフキフキしたとしても、もう口を付ける気には到底なれない。              

『ひーっ💢どーする!どーする?どうすれば・・神様神様!助けて下さい。神様あああ。たーすーけーてーっ』          

 心の中で、必死に叫んだ。       

「ふむ。手水舎で洗えばよかろう。」   

 膝をつき茫然自失の私の頭上から声がする。

「む、無理無理、無理です!絶対無理です!だって、だって、馬の・・」      

「では、別の横笛で吹くしかあるまい。」 

「別の?」               

 見上げると、そこには平安貴族の少年が立っていた。すごっ!さっき巫女さんを見て、わー綺麗💗と感動していたが、この子の衣装は新品で、生地も上等、気品さえ漂っている様な・・八幡社にこんな財力があったとは。なぜこの子だけ、こんな豪華なの?しかもヘアメイクまでしてるじゃん。私達なんか洗い過ぎて色がハゲてる年代物の法被だけなのに。ポカンと口を開け見上げる私に向かって少年は微笑んだ。             

「フッ。当然だ。私は、誉田別命(ホンダワケノミコト)だからな。」        「本田・・みこと?」          

『なんで、名前の中にたわけが・・』   

「あの、別の笛といっても・・」       

「これをもて。」            

 コスプレみこと君の手には見事な木製の横笛があった。私が貸してもらったプラスチックの白いのとは違い、大河ドラマでお公家様が吹いてる笛に似てる。          

「さもあろう。天上人も酔いしれる美しい音色が出る特別なもの。お前に進ぜる。」 

「あああ、ありがとうございます。」   

 私は、知らず知らずのうちに、平伏していた。そして、その笛を手に取ると、私の体が一瞬白く光った。               

 午後からの私の演奏は、人が変わったかの如くだった。今まで奏でたことのない素晴らしい音色を吹き鳴らし、皆も驚いていた。そして、その響きの中で、周りの人々が楽しみ、幸せを感じているのがわかった。                         

 

『誉田別命。神様みたいな名前だな・・。また会いたい、会えるかな? うふ、うふふ。なんか笑いが止まらない。幸せな気分て、こういうことかな?朝の円い虹効果、ハンパないな。』

 その日の夜、湯船に浸かりながら、春ちゃんは充実感でいっぱいだった。  

 

 祭りが終わり、静かになった吉浜八幡社の境内には、春ちゃんの白い横笛が転がっていた。

時を超える瓦工房

作者:しろくまさん

 

未来の高浜市は、光輝く高層ビルや浮遊する車、AIロボットが日常の風景となっていた。

この先進的な都市の片隅に、古びた瓦工房がぽつんと存在していた。

ユウトは学校の帰り道、この瓦工房に足を運ぶ。

彼は友人たちから、この工房には特別な力が宿っているという噂を聞いていた。

工房の中で、彼は古い鬼瓦を見つける。

その瓦に触れた瞬間、未来のビジョンが彼の頭の中に流れ込んできた。

彼は驚きの中で、この能力をどう使うかを考え始める。

 

ユウトの予知能力は日々強くなり、彼は未来の出来事を詳細に予知するようになる。

彼は友人や家族の未来の出来事を予知し、彼らを助けるための行動をとる。

例えば、友人がテストで間違える問題を予知し、勉強を手伝ったり、家族の事故を未然に防いだりする。

しかし、彼が予知した最も衝撃的な未来は、高浜市の伝統的な瓦作りの技術が失われ、その文化が消えてしまうことだった。

ユウトはこの未来を変えるため、瓦作りの技術を学ぶことを決意する。

彼は市の図書館で瓦作りの歴史や技術に関する本を読み漁り、知識を深める。

そして、市内に残る数少ない瓦職人を探し始める。

 

ユウトと松原さんは、日々瓦作りの技術を磨いていた。

工房の中は、瓦の土の匂いと、窯の暖かさで満たされていた。

ユウトは松原さんから、瓦工房が何代にもわたって受け継がれてきた歴史や、高浜市の瓦作りの伝統についても学ぶ。

 

ある日、工房に都市開発の関係者が訪れる。

彼らは、新しいビルの建設のために、瓦工房の土地が取り壊しの対象となることを伝える。

ユウトは驚きと悲しみで言葉を失う。

松原さんは落ち着いた態度で、工房の歴史や文化的価値を説明し、土地の保存を訴えるが、都市開発の関係者は冷たくそれを拒絶する。

 

ユウトは、工房の取り壊しを防ぐための方法を考える。

彼は市の図書館で、都市開発の背景や過去の事例について調査する。

彼は、市民の支持を得ることが最も効果的であると考え、瓦工房の保存を訴える運動を始めることを決意する。

 

ユウトの運動は徐々に広がりを見せ、高浜市の多くの市民が瓦工房の保存を支持するようになる。

学校や地域の集会での発表、SNSを使った情報拡散、署名活動など、ユウトはさまざまな方法で市民の支持を集めていく。

彼の活動は地元のメディアにも取り上げられ、さらに多くの人々の心に響く。

 

ある日、ユウトは市の公聴会に招待される。

公聴会では、都市開発の関係者や市の役所の人々、そして多くの市民が参加していた。

ユウトは堂々と、瓦工房の歴史や文化的価値、そして未来の世代に伝統を継承する重要性について語った。

 

彼の熱意あるスピーチは、多くの人々の心を動かす。

最終的に、市は工房の土地を公園として保存することを決定。

ユウトと松原さんは、公園内で瓦作りのワークショップを開くこととなり、多くの人々が瓦作りの技術に触れる機会を持つようになった。

 

ユウトの予知の能力は徐々に薄れていったが、彼は未来を変えることができる力を持っていることを実感し、自分の力を信じて生きることを決意する。

彼の活動は、高浜市の伝統と文化を守るための新たなスタートとなった。を決意した。

大山緑地の大タヌキ

作者:てぃおんとぅーり

「あいつ動いたんだよ、俺、見ちゃったんだよね」クラスの人気者ケンちゃんが、また男子みんなに嘘をついている。この間だってそう。お昼休みにいきなり「中部公園に青いザリガニがいるんだよ」とか言って。そしたらクラスの男子みんなが信じちゃって、次の土曜日みんなで朝から晩まで探してたとか。ほんと男子ってバカ。

 私の名前は萩原美緒。この間8歳になったばかりの小学2年生。私が1年生の頃この嘘つきケンちゃんがいる翼小学校に転校してきた。親友になってくれた由美ちゃんは、今ちょっとだけケンちゃんの事が気になっているみたい。

 「だ〜か〜ら!本当なんだって!」ケンちゃんは声が大きい。で、今回の嘘は何?私は全然興味なんて無いけど、遠くから聞こえてくるケンちゃんの話に、耳だけ傾けた。

 「大山緑地に大タヌキがいるのは、みんな知ってるだろ?あいつだよ、あいつが、動いたんだ」大山緑地?大タヌキ?何のことだかサッパリわからない。何よ!うーん!気になる!忘れようとすれば忘れようとする程、想像上の大タヌキが私の頭の中を埋め尽くしていった。

 学校からの帰り道「ねえ由美ちゃん、大山緑地ってどこなんだろ?」私は尋ねて、しまった!と後悔した。「ケンちゃんの話、やっぱり美緒ちゃんも聞いてたんだ」クスクスと由美が笑った。

 「大山緑地ってどこなんだろ?遠いのかな?大タヌキってなんだろうね?」「大タヌキって、熊くらいに大きかったりして!」私達は、もう大山緑地の大タヌキが気になって気になって仕方がなくなってしまっていた。

 「大山緑地って、どこ?」帰宅してすぐ私はママに聞いてみた。「どうしたのよ、急に」ママは不思議な顔をしながら「まだ、そんなに高浜市に詳しい訳じゃないから」と地図で場所を調べてくれた。すると、どうやら私の家からもそこまで遠くは無いらしい。「ありがとうママ!」そうだ、この間の私の誕生日におじいちゃんがプレゼントしてくれたあの自転車に乗れば、今からでも十分に行ける距離だ。由美ちゃんにも教えなきゃ。早速、由美ちゃんの家に電話をかけると、由美ちゃんのママの声がした。「ごめんね、美緒ちゃん。由美は今からお出かけしちゃうの。だから、また誘ってあげて。」由美ちゃんのママがそう言うと、電話が切れた。

 残念すぎる。でも私は、諦めない。今から1人で大山緑地に行くんだ。電話を横で聞いていたママが地図を描いてくれていた。「気をつけて行ってらっしゃいね」と水筒にお茶を入れてくれて、それから、500円のお小遣いをくれた。

 翼小学校のすぐ近くに住んでる私からしたら、突然の大冒険の始まりだ。待ってろよ〜、大タヌキ!まだピカピカの自転車を漕ぎ、交差点を渡り、知らない道を通り、ママの描いてくれた地図を頼りに、やっとの思いで大山緑地に辿り着いた。ここかな?ふうー疲れた。途中、Tポートに寄り道をしたのは我ながら正解だった。ふふふ。ママがくれたお小遣いでお菓子を買ったんだ。ここまで結構距離があったし、ちょっとお腹も空いたし。休憩休憩〜。

 そんな時だった「わあ!」私は思わず声を上げた。熊?いや、タヌキだ。大タヌキが突然現れた。これか〜!これがケンちゃんの言ってた大タヌキ!大きいー!!!て、何興奮しちゃってんの私。ふーん。なーんだ、焼き物じゃん。動くわけ無いじゃん。やっぱりケンちゃんの嘘つき。期待して損しちゃった。

 想像してたのよりは大きくてびっくりしちゃったけど。ちょっと休憩したら帰ろ〜っと。

 そんな時「お嬢ちゃん、1人かい?」私が大タヌキのすぐそばで休憩をしていたら、お散歩をしていたお婆ちゃんに声を掛けられた。

 「はい!学校のお友達が大山緑地の大タヌキが動いたって言うから。それが気になっちゃって」「ふふふ。そうかい、それはそれは」お婆ちゃんは笑いながら私の横に腰掛けた。

 「この大タヌキさんは、日本一とも言われているんだよ」「日本一?」「そうそう、日本一の大タヌキ」お婆ちゃんはニコニコして「またきてね」と私に言った。

 「うん、また来るね!ママも心配するし、そろそろ帰ろうかな。お婆ちゃんありがとう。」

 私は立ち上がり、自転車のスタンドを上げ、夕日を背にペダルを漕ぎ始めた。大タヌキ、まだ見えるかな?立ち止まり振り返ると、大タヌキがニコッと笑った気がした。ケンちゃん、ケンちゃんは嘘つきだけど、今日ケンちゃんが言っていたことは、私なんとなく分かった気がするよ。今度は由美ちゃんも連れてこよっと。

 大冒険を終え1人帰宅する美緒ちゃんの背中を大山緑地の大タヌキはいつまでも優しく見守っていた。

 そして、さっきまでお婆ちゃんが腰掛けていた場所には大きな大きな葉っぱが1枚落ちていた。

(*原文ママ)

余命士 〜拝啓、お父さん、お母さんへ。僕は自分の名前が大嫌い〜

作者:かとう なおと

「拝啓、お父さん、お母さんへ。僕は自分の名前が大嫌いです。」
​僕の名前は、高浜菊楠(たかはま きくな)。小学校6年生の12歳。
名前は両親から1文字ずつ取ったもの。

父親は、菊次(きくじ)。母親は、楠奈(くすな)。
菊の花言葉は、高貴・高潔・高尚。楠は長寿の木、生命力。
気高く丈夫に育つように願いが込められている。

​はっきり言って、僕は名前負けもいいところだ。
現実の僕は、身体も弱くて素直じゃない。絶賛反抗期中。
菊楠という名前の大きさが僕を余計に小さく見せる。
このときの僕は名前の大切さを知る由もなかった。

公園で友達と夕方まで遊んでいたときのこと。
どこからともなく声がした。
最近この公園に幽霊が出ると噂されていたことを思い出し、周囲を見渡した。
振り向くと僕の後ろには女性が立っていた。驚きの余り情けない声が出た。
「わぁ」

​その女性は制服を着ていた。
多分、近所の高校生。
「たすけてください。」
そのお姉ちゃんと目が合った。
「君には私が見えるのね!よかった。」

「え?まさか幽霊ですか?」
普通に話しかけられたので、僕も普通に話してしまった。

「違うの。私は・・名前を忘れてしまったの。」
「でも私が見えたということは、君は私の名前が分かるの?」

僕は初めて会ったお姉ちゃんの名前など全く知らなかったが悩んだ末にいいことを考えた。
そうだ、僕の名前をあげよう。
僕の大嫌いなこの名前を。
「うん、知ってるよ。」
「お姉ちゃんの名前は、菊楠だよ。」

​すると、お姉ちゃんは涙を流して喜んだ。
そして、すぐにそのお姉ちゃんは僕の姿が見えなくなったように見回した。
「あれ?私、誰と話していたっけ?」

「お姉ちゃん。ねぇ!」
お姉ちゃんは反応することなく、公園から立ち去った。
「なんだよ!せっかく僕の名前をあげたのに。」

僕は暗くなる前に家に帰った。
「ただいま」

「・・・」

反応がない。いつもならお母さんがすぐにきて、おかえりと言ってくれるのに。
聞こえなかったのかな?
「ただいま!!」
今度は大声で叫んだ。
それでも、お母さんは反応しなかった。
仕方なく、靴を脱いで、キッチンへ向かいお母さんに直接言った。
「ただいま!なんで無視するの?」

お母さんは上の空で、不思議なことを言い出した。
「あの子、遅いわね。どこで遊んでいるのかしら。」
「あれ?あの子って誰だっけ?」

そのとき、僕はやっとことの重大さに気付いた。
「僕が見えていない!?」

僕は公園に戻って、ブランコに乗りながら、途方にくれていた。
お腹が空いていたことも忘れ考えた。

​「もしかして、お姉ちゃんに名前をあげたからか?」
その後必死でお姉ちゃんを探したが、結局見つけることはできなかった。
涙が止まらない。なんでこんなことに・・

​名前をあげなきゃ良かった。
「あれ、僕の名前ってなんだったっけ?」
さっきまで覚えていた気がしたのに、思い出せない。

​「僕、誰だっけ。」

​僕は、自分の名前を忘れた。
喉元まで出てきているのに、出てこない。
すると、一人の男性が公園のベンチに座った。
僕は、導かれるようにその男性の横に座った。

​するとその男性は僕に話しかけてきた。
「君は、名前がないね。」
「そうか、名前の余命が尽きたか。」

​その男性は、僕が見えていた。
僕は嬉しくてボロボロと泣いた。
「ぼ、ぼく、名前を思い出せないよ。」

​僕は泣きながら話した。
男性は僕を見て名乗った。
「私の名前は、余命士。名前の余命が見える人だよ。」
「君は名前をある女性に渡した。覚えている?」

​僕は頷いた。
僕は自分の名前が嫌いだった。
だから単純にあげてもいいと思った。

​「名前というのは、みんなが思うよりもずっと大切なもの。」
「この世界にある様々なものには名前がある。今いるこの公園にも。」

​「目に見えないものですら必ず名前がある。」
「言い換えれば、名前がない。それは存在しないのと同じことなのさ。」
「君は、自身で自分の存在を否定してしまった。」

​僕は、今この世に存在しない・・
だから、お母さんには僕が見えなかったのか。

​「君は、どうしたい?」

​「余命士さん、助けてください。」
僕は、心から言った。

​「そう。それでいい。」
「僕の名前を呼ぶことでその存在を認めた。名前を呼ぶことは相手を肯定すること。」
「そして、心から助けを求めた。それは相手に自分の存在を知らせること。」
「君が名前をあげたその人も、君に助けを求めたから君はそれに気付いた。」

​余命士は言った。
「君を助けよう。」
「君の名前は、大切な人がもう一度与えてくれる。ちゃんと聞いて大切にしなさい。」

​僕は、余命士に言われ、もう一度家に帰った。
「ただいまー。」
すると、お母さんが走ってきて言った。
「菊楠!こんな遅くまでどこに行っていたの!!」
僕は嬉しくなって。抱きついた。
「拝啓、お父さん、お母さんへ。僕に名前をくれてありがとう。」 完

(*原文ママ)

真夏の世の夢。

作者:横井マリ

ああ、最悪。マジ、むかつく…。

ペア航空券を当てた母は、夏休み中、僕を父方の祖父母に預けるという暴挙に出て、父と二人 きりで海外へ出かけてしまった。茫然自失の僕を見かねて、祖母がスタンプラリーのチラシをくれた。

この吉浜地区には人形小路という通りがあり、細工人形を巡るスタンプラリーができるらしい。

「何してるの?」

声をかけられたのは、大きな雛人形屋の裏手で、吉浜慈母観音堂と書かれた建物を眺めていた 時だった。その建物は、川の上に張り出すような、不思議な造りだった。

「船宿みたいだろ?」

「え?」

「昔はここが海岸線で、伊勢湾台風の時は、そこの郵便局まで水に浸かったんだ。」

次から次へと疑問が沸くが、少年の目に引き込まれた。僕は、この目を知っている?

「案内するよ。」

「高平公園は、ちょっと苦手だ。」

恐々しい龍の置物が並ぶ公園を横切る。蝉の声が降り注ぐ散策道を抜け、うどん屋とコンビニ がある二股の交差点を右手へ。高架を潜ると、川の音と女性達の声が聞こえて来た。

「あら、赤は元気?」

「はい、お陰様で。」

段差のある川の上段に野菜を洗う中年女性が二人、下段で布おむつを洗う女性の背中には、赤 ん坊が眠っていた。

「ダンダン川。共同で使う洗い場だよ。」

そこから道を右に逸れると、川に丸太が浮いていた。

「貯木場だ。」

どこからか少年たちが現れ、丸太に乗って遊び始めた。みんな坊主頭にランニング&短パン。 なんだか昭和の写真みたい。

「やろう。」

「え?」

腕を引っ張られて上った丸太は、不安定だが、浮遊感もあって楽しい。誰かが棒を投げてくれ て、バランスが取りやすくなる。

「よし、競争だ。」

みんなが一斉に動く。途端にバランスを崩して川へ、ドボン。笑い声と白熱戦は、夕暮れまで 続いた。

「どこ行ってたの!」

ずぶ濡れの僕を、祖母はカンカン声で迎えてくれた。多くを語れば、もっと怒られるはずだ。 咄嗟に嘘が出る。昭和ボーイズ達が、いたずらっ子のように舌を出すのが目に浮かぶ。

「フフ。」

思わず吹き出す。無口な爺さんが釣竿を触る手を止めて、チラッとこちらを見た。

その日から、僕は毎日のように彼らと遊びに出かけた。例の、龍のモニュメントが並ぶ公園で 缶蹴りをしたり、ダンダン川でずぶ濡れになったり、ハゼを釣ったり…。昭和な遊びが続いたけ れど、田舎だからと目をつぶって。

「次は、明石の海を目指そうよ。」

吸い込まれる目の少年が言う。松並木と砂浜があり、岩ガキも採れるらしい。

「ちょっと遠いから、ラクしよう。」

提案は、こうだ。土管か瓦を積んでいく牛車の荷台にこっそり飛び乗り、海を目指す。今どき 牛車? という疑問と、どんなものなんだろう? という好奇心が交差する。

土管に隠れ、牛車が通り過ぎるのを待つ。

「行くぞ、今だ!」

その一台に、一人がこっそり登った。嫌がるように牛が肩を振る。操る大人は、気付かない。 いたずら坊主達は、次から次へと、牛車や馬車に飛び乗ってのんびり南下していく。

「君の目は、変わらないね。」

いつのまにか少年が、僕の目を覗き込んでいたようだ。

「僕の目?」

「同じだ。…驚いた。」

何の話かと聞こうとしたが、

「逃げろ!」

無銭乗車がばれたようだ、みんな一斉に松並木に向かってかけていく。その先には砂浜が広が っているのだろう。

「おい、退屈だろう。魚釣りにでも行くか?」

縁側で転寝していたようだ。爺さんが、寝転ぶ僕を覗き込んでいる。

そこは、昭和ボーイズらと来た堤防だった。

「ハゼが釣れるんだ。」

「知ってる。」

疑問顔の爺さんをはぐらかして背を向けると、昭和ボーイズの一人がべそをかいて立っている のが見えた。

「姉さんが嫁に行くんだ。」

いつの間にか、あの目の少年が傍らにいた。お菓子をばら蒔く紋付き袴の人達、それを拾う人々。 賑わいの中、花嫁が出てきた。べそかき少年に話しかける。少年は目をこすり、鼻をすすってか ら、大きくうなづいた。花嫁は仲人らと一緒に渡し場から船に乗り込み、ゆっくり川を渡っていく。

その夜、爺さんはまた釣竿の手入れをしていた。そして、こう切り出した。

「昔話をしてやろう。」

吉浜村の高平に住む長者に、美しい娘がいた。縁談を進めるが首を縦に振らず、好きな男がい ると言う。誰も見たことがないその男を不審に思い、長者は糸を通した針を娘に渡して、こっそ り男の袖にくくらせた。

「翌朝、糸をたどると竜田川の淵で、糸が絡み、喉に針が刺さった蛇がいた。」

長者に呪縛を解かれ、逃げて行く蛇。その目には、涙で滲む僕の目が映っている。

「明日、こいつを持っていくかい?」

爺さんは、テグスを通した針を手にしていた。

今日は、壁画のある坂道に集まることになっていた。この町を象徴する赤土の土管と黒土の瓦 で作られた壁画は、西日に照らされ熱くなっていた。もうすぐ、昭和ボーイズに会える。あの少 年も来るだろう。

テグスのついた縫い針は、置いて来た。夏休みは、まだ終わらせたくないから

(*原文ママ)